001 すき
「だぁいすき。」
「僕もだよ。」
ぎゅっと抱き締めてくる君。
かわいいなって思う・・・
あぁ出会えてよかった
「?」
「何でも無いよ。」
あぁ、もう本当。
小動物みたいに潤ませた瞳に仕草。
大好きだよ。
「ね、あたしあっちにいってくるねパパ」
「あぁ。」
親馬鹿だけどね、
可愛い可愛い
僕の自慢の娘さ。
002 必要なモノ
箒?
杖?
真っ黒なローブ?
そんな物要らないわ、
私たち魔法使いに必要なのは
魔法使いになる度胸だけよ。
私たちみたいにね!
「ね、そうでしょ?」
「・・・知らないよ。」
でも、そう言った彼の横顔には
嬉しそうに笑んでいる。
あぁでもやっぱり必要なものもう1つあったわ
私たちみたいにお互いを信頼できる
パートナーを持つこと。
やっぱりこれが一番よ。
003 幸福論 (Promise)
「ねぇ・・・」
「はい。」
「お茶が飲みたいわ・・・」
「はい、今入れますね。」
リィンの突然の一言にも当たり前のようにリューヴィルは対応する。
それは長年付き添ってきた中ならではの事だろう
「・・・よくやるよなぁ、お前。」
「はい?」
コポコポと音を立ててお茶をカップに注ぐリューヴィルを見ながら
ミルゥは甚だ呆れたように溜め息と共に言う。
「慣れてるなと思って・・・」
「あぁ、此れは慣れてると言うよりも・・・」
一度お茶を注ぐ手を止めてカップの周りをゆっくりと飛んでいる
ミルゥの方へニコリと微笑みかけ、
「此れが僕の幸せなんですよ。」
004 出逢い (Nobody Knows Story)
ねぇ・・・あなたは素敵な出逢いってあると思う?
私は、あると思うなぁ・・・
みんな気付いてないのよ
目の前の人との出逢いに
全ての人との出逢いが奇跡そのものなんだって事
もしその人と話せたなら
もしその人の手を握れたなら
もしその人を抱きしめる事が出来たなら・・・
だって、それはもう
立派な、素敵な出逢いなんだもの
ねっ?そうでしょ?らーく・・・
005 雨
突然の雨
駆け出した君
雨に包まれた景色の向こうから君が駆けてくる
息を切らしてそんな必死に
私のところへ付いた頃には
君はびしょ濡れ、私もびしょ濡れ
そんな事も気にしないで
君は私を抱き上げる
「ゴメンな・・・ポチ・・・」
ううん、いいよ・・・
でも、オスみたいでありがちな名前は許さないけどっ
006 妖しの月
赤、零れるほどの満月
夜道に人は殆んど居らず男が二人立つのみ。
「なぁ・・・昔言われたんだが」
おもむろに話し出した男はいまだ視線を月から離さない
「こんなに赤い月の日は・・・」「『人を切りたくなりますね』?」
ピクリと眉を動かす
隣に居るのは仲間の男
否、仲間のはずの男。
「(あぁ、『昔』のは・・・)」
何かに納得し静かに月を見放した
007 すくいだして
「ねぇ、僕を掬いだして」
昔言われた言葉。
今でも憶えている凍えるほど寒くも、
悶え苦しむほどに熱くも無い、
むしろ温度なんか無い無機質な場所で昔の彼が言った言葉。
影に飲み込まれそうだった小さな彼を掬う事はしなかった。
今。
私はその記憶に溺れてしまいそう
必死でもがくのに、唯一見える小さな手は私を余計に沈める。
「お願い、助けて。」
「あなたは助けてくれなかったのに?」
「お願い・・・」
「・・・」
「ねぇ、私を救いだして」
008
009
010
011
012
013
014
015
016
017
018
019
020
021
022
023
024
025
026
027
028
029
030
031
032
033
034
035
036
037
038
039
040
041
042
043
044
045
046
047
048
049
050