鈍く光る鎌を手に



「お呼びですかい?マオー様。」
「敬意が感じられないね、死神。」

何時もどうり素っ気無い態度。アノ人らしい。
俺のお慕いしている、今目の前にいる方は偉大なる方。俺たち魔族なら生まれたその瞬間から敬愛するべき存在、魔王様。
俺ももちろん例に漏れず尊敬し、お慕い申し上げているわけだが、唯一他のどんな魔族とも違うのは俺が唯一、魔王様と共に教育を受けたという事。
それはもう、遥か昔の事で俺が8つ、アイツが4つの頃。
その頃はまだ、地位も何も関係なくって一緒になって悪戯をしていたのが懐かしい。
いや、大概俺があいつを半ば無理矢理引っ張っていっていたのだけど・・・
それでも今よりは笑っていた。微かだったとしても、心から・・・。

「まぁ、いいわ。それよりも貴女にお願いがあるの。」

『お願い』なんて卑怯な言葉。
俺が命令には背けても貴女の願いならば何があろうと叶えるのを知っていて甘く囁いてくる

「陛下のお望みとあらば如何様なことでも。」

だから俺もそれに応じて甘く声を偽る
もしもそのお願いで俺が死んでしまったら貴女が少しでも胸を痛めるように、貴女が少しでも涙を流してくれるように

「・・・此処に載ってる人間の魂を全部狩って来てちょうだい。一人だって逃しちゃ駄目よ?」
「無理かしら?」
「いーや。ただ暫くは戻れんだろうね。」

返事を待たずにこんな、今の俺のとっては大分居心地の悪い部屋から出ようと扉の前までくれば、何故か直ぐ前、俺とドアとの隙間に魔王様の姿があって
こんな狭い隙間だから俺に身体を密着させて、尚且つ首に腕を回して顔を上げ見上げてくる

「・・・何か?」
今の言い方はまずかった。
つい余裕が無くて、普段のおちゃらけたキャラが全く無かった。

「何ですかい?」

慌てて言い直せばクスリと艶やかに笑んで、不意に顔を近づけ口付けをしてきた。

「何をッ・・・」
「ねぇ死神、愛してるわ。だから・・・」
「!」

それ以上先は聞きたくなくて、急いで魔王様を体から引き剥がすと既に取っ手に手をかけていたドアを空け、逃げるように広い廊下へと出る。
みっともない。あれしきの事でこんなにも動揺して呼吸をするのも困難だなんて・・・。
あの方が俺を動揺させるのは此れほどまでに簡単なのだと改めて知った。
一つ大きく息を吐いて、服をただして、前を見据えて。
今の俺は魔王様と幼少期を共にしていた俺ではなく、死神。
ただあの方のお心のままに人の魂を狩り、捧げるだけ。
そうだ、何があろうと俺は名も無き死神。大鎌を手に今日も今日とて狩りに行くだけだ。





死神と魔王の関係

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