古びた赤煉瓦を敷き詰めた道。
街を飾る青々と茂る緑。
普段は煩い人のいない道。
水の香り。
雨。

私の好きな街並み、
雨色の街。



傘の中で

「〜♪、今日もいい天気で私は幸せ者ね。」 今日はあいにくの雨。 けして良い天気とはいえない、というか絶対言えない。 それなのにも関わらず少女、アイニーは 白地に青い水玉模様の傘を差したままくるくると回し 機嫌良さげにスキップ混じりの足取りで水溜りが所々にある 赤煉瓦の敷き詰められた道を進んでゆく。 「ねぇカタツムリさん?クスクス・・・返事なんてする訳ないわよね?」 「ねぇ、さっきから何言ってるのお姉さん。」 「きゃあっ!」 何時もは誰も外に出ている筈のない日で、 当然今も周りに人は居らず話し掛けられる事も無いと 思っていたアイニーは、突然下から話し掛けられた事に驚き 思わず持っていた水玉模様の傘を取り落とす。 「うわっ!危ないなぁお姉さん、傘当たるとこだったじゃない」 「ご、ごめんね・・・えと、君は?」 「僕?僕はコウロ!」 「コウロくん・・・何で此処に?」 「えっとね、お姉さん見てたら楽しそうでね、見に来ちゃった」 「そう・・・」 傘を拾いコウロの方に多少傾けて二人の頭上に傘を差す。 それを見てコウロは機嫌良さげだった表情を更に綻ばせ ニコニコと嬉しそうに笑い、 アイニーもつられたようににこりと笑う。 「ねぇお姉さん、こ・・・あれ・・・」 「?」 「雨止んじゃった・・・。」 「え?あ、ホントだね」 心なしか残念そうに空を見上げたコウロは やはり残念そうに言葉を紡ぐ。 アイニーは傘の外へ手を伸ばし雨が降っているかを確認し 一粒も雨が手に当たらないのを確認すると 持っていた傘を閉じる。 「お姉さん、僕もう行かなきゃいけないんだけど、また逢おうね!」 「・・・うん、またねコウロくん」 「ばいばいお姉さん、あ・・・」 「え?」 ちゅ・・・ 「なっ!!」 「またね、お姉さん」 不意打ちに口付けをされた頬をおさえ固まるアイニーに 極上の笑顔を残して、足早に航路は去ってゆく アイニーは座り込むことこそしなかったものの 暫くの間、その場で立ったまま呆けていた。 FROM:烏夜
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